倍率と入りやすさは別?合格難易度と倍率の関係
志望校を選ぶ際にどうやって決めるかは受験生によって変わります。
その大学を純粋に気に入っている、家から近い、やりたいことがそこにある、授業料が安い、倍率が低いなど様々です。
その中でも学生は「偏差値」や「倍率」は、合格と直結する要素で受験生も親御さんも気になる要素と言えます。
しかし実際には「倍率」と「入りやすさ」は必ずしも一致はしません。
そのからくりについて説明していきたいと思います。
▼ 医学部入試コラム 目次
偏差値も倍率も受験生のレベルによって変わる相対評価
前回のコラムにもあります通り、偏差値は絶対的にあてにできるものではありません。
その模試を受けている数や生徒層によっても変動しますし、主催している予備校によっても違う判定が出るからです。
そのため偏差値だけを全面的に信頼して志望校を選ぶのはかなり危険です。
倍率に関してもそうです。
医学部の倍率は10倍~30倍くらいには普通になりますし、人気の医学部ではそれ以上になることもあります。
しかし一般的な公立高校の入試と違って大学の入試は日程さえ違えば複数受けることができます。
その医学部の受験に来ている学生も全員が第一志望とは限りません。
もしかしたら第二、第三希望で他で合格すれば、合格しても入学しない可能性もあるのです。
また、願書を出して志望したからといって、それらの学生が全員受験日に現れるとも限りません。
先にどこかで合格したから受験を取りやめる場合もあるのです。
そのため、よく「見かけの倍率」や「実質倍率」という言葉が出てきます。
重要なのは「本当にやる気のある学生がどれだけ実際に受けに来たか」であって、それ以外は見せかけの数値なのです。
倍率だけではなく、受けている学生の層も参考に
簡単な例を挙げて説明します。
例えばA大学医学部とB大学医学部があったとします。
どちらも合格定員は100名でした。
A大学は1万人の受験者がおり、B大学の受験者は1000人でした。
どちらが入りやすそうでしょうか?
倍率を考えるとA大学医学部は100倍です。
B大学医学部は10倍です。
どう考えてもB大学医学部の方が入りやすそうです。
しかしA大学で自分より成績が上なのが99人でB大学で自分より成績が上なのが500人という情報が加わればどうでしょうか?
A大学では自分が100位ですので合格できます。
この場合自分より下が1人だろうが9900人だろうが関係はありません。
しかしB大学では自分は501位です。
もちろん不合格です。
これが倍率と入りやすさが一致しないということなのです。
もし入りやすさを調べるのであれば、倍率ではなく、どういった層の学生が受験しているかということが重要だということになります。
このことを正しく理解できれば、「倍率が低いからといって簡単に入れるわけではない」ということがわかってもらえると思います。
例えば、2015年度の東京慈恵会医科大学の実質倍率は6.4倍でした。
これは普通に10倍、20倍を超える倍率が多い医学系ではかなり低い部類に入ります。
これだけ倍率が低いのだから入りやすいかと言えば、実際まったくそのようなことはありません。
むしろ東京慈恵会医科大学は、有名な慶応義塾大学医学部と並ぶ難易度の大学なのです。
これは「そもそも学力が足りていない生徒が選ばなかった」ことが原因です。
優秀な生徒しか実際に受験しなかったために倍率が低くなったのです。
もちろん「入りやすい」などということはありません。
重要なのは正確な情報と多面的に分析すること
基本的に倍率が高くなる医学部の受験で重要なことは正確な情報を多面的に分析すること。
最近地方の大学では「地域入試」を行っていたり、「AO入試枠」を作ったりしているところが増えてきています。
地域入試は大学卒業後、その地域での医療機関で勤務する条件で授業料の免除が行われたりするものです。
あまり学生に人気のない地域だったりすると意外に入りやすい、ということもあります。
また、国公立大学と私立大学でも大きく事情は異なってきます。
5教科が平均的にできる学生なら国公立が、得意科目と苦手科目の差が大きい場合は私立が向いているかもしれません。
自分が苦手としている科目が試験科目にない私立大学を受験すれば合格の可能性は上がるでしょう。
それだけに限らず、近年医学部の定員が毎年のように変動していますし、試験科目が変わる場合もあります。
また、私立大学の場合はそれぞれの大学の試験問題の特徴が強く出ることもあります。
入試の方式や定員などの情報は最新の正確なものでなければ意味をなさないのです。
それをしっかりと集めて正しく分析している学生は、見せかけの偏差値や倍率に踊らされることなく志望校を選ぶことができるでしょう。
インターネットに載っている情報はすべてが正しいわけではありません。
大学自身の公式HPや、医学部専門の予備校などはこういった正確な情報が集まっています。
正しい情報を得て、その情報を様々な視点で分析をしていきましょう。