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医学部地域枠の実態から、メリットデメリットを解説

大学受験の計画を立てるためには、受験の制度についてよく知っておくことが重要です。

医学部の入試では、一般枠とは別で地域枠という制度があります。

医学部受験を考えているけれど、一般枠と地域枠は何が異なるのか、よく分からないという方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、医学部地域枠の実態から、メリットとデメリットまで解説します。

医学部への進学を検討している方の参考になれば幸いです。

▼目次

地域枠とはどんな制度?

制度の目的

日本では医師不足が問題になっており、今後さらに深刻化すると予想されています。

さらに診療科によって医師の数が偏っている問題もあります。

そこで、医師不足と診療科間の偏在の問題を解決するために医学部の地域枠制度が導入されました。

制度の仕組み

地方枠とは、医師が不足している地方の大学で、卒業後の一定期間その地域で働くことを出願条件に、一般枠とは別で募集している枠のことです。

自治医科大学の制度がモデルになっていると言われています。

自治医科大学では、地域医療に従事する人材を育てるために各都道府県から2〜3人を合格とする制度を採用しています。

この仕組みをもとに、地域枠制度は平成22年から開始されました。

当初は医学部定員全体の13%程度が地域枠での募集となっていましたが、令和2年には全体の18%が地域枠での募集となっています。

今後はどうなるの?

平成30年に医療法が改正され、第30条の23第5号に基づき、都道府県知事から大学への地域枠の設定や、拡充の要請ができるようになりました。

また、都道府県が大学の取り組みを支援することとされています。

現在ほぼ全ての医学部(81大学中71大学)が地域枠等を導入していますが、今後さらに拡大すると予想されます。

厚生労働省によると、2022年以降の医師養成数の方針は、医師需給推計の結果を踏まえて2020年4月までを目処に示される予定でした。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、2020年4月までの間に十分な議論を行うことができなかったとのことです。

今後の地域枠の人数や募集要項などは、最新情報を常にチェックしておくことが重要でしょう。

地域枠のメリット

入りやすい

医学部の地域枠は卒業後にその地域での従事が条件となるので、一般枠に比べると志願者が少ないです。

そのため、倍率が低く、偏差値も低い傾向があります。

大学によっては推薦枠もあり、編入者にも適用されるので、一般枠で医学部に入るよりも地域枠で出願した方が入りやすい可能性が高いです。

入学後の勉強で困らない

一般枠よりも入りやすいというと、入学した後に苦労するのではないかと心配になるかと思います。

しかし平成20年度と平成21年度においては、地域枠で入学した学生のストレート卒業率が90%ほど、国試現役合格率が97%ほどであり、全国平均を上回っていたというデータがあります。

そのため、入学後の勉強についてはそこまで心配する必要はなさそうです。

また、入学時点で卒業後の進路が確約されているので、進路が決まらずに困ることがないのもメリットといえます。

経済的な理由で医学部を諦めずに済む

地域枠では、卒業後の地域での従事を条件にしている代わりに、学費減免制度や奨学金制度が充実しています。

奨学金貸与額は1000万〜2000万としている大学が多く、うまく利用すれば学費を抑えることができます。

経済的な理由から一般枠で医学部に行くことが難しいという方でも、地域枠を利用すれば諦めずに済む可能性が高いです。

地域枠のデメリット

奨学金返済

地域枠を利用すると、奨学金が借りられることは前述の通りです。

その後無事卒業ができ、その地域で一定期間働いた場合は奨学金を返済する義務は生じません。

しかし地域枠を離脱する場合、奨学金を一括で返済しなければなりません。

6年間の奨学金は約1500万円、しかも利子が10%とかなり高いので、離脱するのはかなりのコストがかかってしまいます。

卒業後のキャリアが制限される

地域枠を卒業した医師が従事要件に従わない場合、マッチングに参加できないことになりました。

違反した場合は、病院への補助金の減額、研修医の採用人数の原因が課されます。

そのため、地域枠で入学した後は離脱することが難しくなってしまいました。

卒業後に選択できる診療科に制限がある場合もあり、希望する進路に進めない可能性があります。

厚生労働省のデータでも、地域枠を離脱した学生・医師の離脱理由で最も多いのが、「希望する進路との不一致」でした。

地域枠での卒業後の勤務先が離島や僻地になった場合、最新の知識や医療機器に触れられないことがあります。

医療の最先端に触れられないことが、その後のキャリアを積む上で支障となる懸念もあります。

卒業後の拘束期間が長い

地域枠で医学部に入学した場合、在学中6年+研修2年+7年の合計15年にわたってその地域に住まなければなりません。

現役でストレートに卒業できた場合でも、30代半ばまで拘束されることになります。

これは結婚や出産を考える方にとっては大きな足かせになる可能性があります。

しかし、自治医科大学では結婚協定を結んでいる前例があります。

この協定では、自治医科大学卒業生同士で結婚した場合、各都道府県の配慮のもと、特例的に配偶者の出身都道府県での勤務が認められます。

今後は地域枠離脱を防ぐために、自治医科大学の例をもとに、従事要件の変更などの対応がなされることが予想されます。

まとめ

地域枠を利用すると多額の奨学金を借りることができるので、経済的理由がある方には助かる制度です。

しかし進路やキャリアにも制限がある場合が多いので、自分の希望進路や人生設計をよく考えた上で判断した方が良いでしょう。

地域枠に制度に関しては今後対応が変わる可能性もあるので、最新情報をこまめにチェックしておくことをおすすめします。